導入から15分以内で運用開始

 グループウエア──今ではこの言葉は説明の必要がないほど一般化している。大中規模の企業では既に導入しているところも多いだろう。

 しかし,コスト削減が叫ばれるご時世,多額の導入コストがかかることを考えると,導入に踏み切れない企業も少なくない。実際にグループウエアを導入してみると,企業全体でかかるコストが大幅に削減できることもあるのだが。

 費用をかけずに導入し,すぐに使える(試せる),そんな都合のよいグループウエアが存在する。それが「La!cooda WIZ」である。

 La!cooda WIZ はオープンソースの無償利用可能グループウエアである。Linuxと組み合わせて使えば,コストをかけずにグループウエア環境を構築できる。とは言え,「すぐに使える」とは言い難い。

 そこで本連載では,La!cooda WIZの導入方法だけではなく,ユーザーの一括登録などの初期設定方法,バックアップやセキュリティ対策などの運用管理方法のノウハウを解説し,「すぐに使える」を実現したいと思う。

 具体的には,第1回は La!cooda WIZ の導入と初期設定,第2回はバックアップなどの運用管理とセキュリティ対策,そして,第3回は日本語検索エンジン「Namazu」を用いた機能拡張を紹介する予定である。

La!cooda WIZの導入 LAMPの環境を用意する

 La!cooda WIZ(http://wiz.syscon.co.jp/)は,前述した通りオープンソースのWebベースのグループウエアである。グループウエアに必要な11種類の機能(有償オプションで12種類)を備える。Windows版とLinux版の2種類が配布されている。

 Linux版は,Webサーバー・ソフト「Apache」とスクリプト言語「PHP」,リレーショナル・データベース管理システム(RDBMS)「PostgreSQL」あるいは「MySQL」がインストールされている環境で動作する。一方,Windows版は,ApacheとPHP,MySQLがインストール されている環境で動作する。

インストール前の環境構築  前述の通り,L i n u x 版のL a ! c o o d a WIZが対応するRDBMSはPostgreSQLとMySQLである。日本では,オープンソースのRDBMSと言えばPostgreSQLが有名だが,最近ではMySQLも多くのシステムで利用されるようになってきている。また,大手のE C サイトでも MySQLを採用する事例が増え,日本国内での認知度も高くなってきている。

 MySQLは他のRDBMSに比べて機能面で若干足りない部分があったが,バージョン4.1では副問い合わせが実装され,バージョン5.0では,ストアド・プロシージャやトリガー,ビューといった機能が実装される予定だ。これにより,RDBMSに必要な機能はほぼそろうことになるだろう。

 そこで,本特集では急速にシェアを伸ばしつつあるMySQLを用いることにした。

(1)Linux OSの導入

本記事では,2004年5月29日に公開された無償のLinuxディストリビューション「Fedora Core2」を使用する。

 まず,Fedora Core2をインストールしたサーバーを用意する。インストール手順は,日経Linux2004年7月号の「インストール完全ガイド」(p.156-163)を参考にされたい。なお,筆者は「インストールの種類」で「カスタム(C)」を選択し,「ファイヤーウォールの設定」で「ファイアウォールなし(O)」にチェックを付け,「パッケージグループの選択」で表2に示したパッケージを選択してインストールを実施した。

 インストールが完了したら,yumコマンドで最新のパッケージに更新しておこう。なお,デフォルトで設定されているサイトではダウンロード速度が遅く,更新に時間がかかる。そこで,図1のように国内にあるミラー・サイトに/etc/yum.confファイルを書き換えることをお勧めする。

図1 /etc/yum.confファイルの更新個所
:
[base]
name=Fedora Core $releasever - $basearch - Base
baseurl=http://ftp.riken.go.jp/Linux/fedora/core/$releasever/$basearch/os/
[updates-released]
name=Fedora Core $releasever - $basearch - Released Updates
baseurl=http://ftp.riken.go.jp/Linux/fedora/core/updates/$releasever/$basearch/
:

 パッケージの更新手順は次の通り。まず,ターミナルからroot権限で「yum check-update」のコマンドを実行すると更新ファイルの有無が確認できる。確認できたら「yum update」のコマンドでパッケージをアップデートする。
$ su
# yum check-update
# yum update

 更新パッケージのリストが表示され,最後に更新確認メッセージが表示されるので「y」を入力する。

Is this ok [y/N]:y

これで最新のパッケージに更新される。更新された最新のパッケージに切り替わるようにシステムを再起動しておく。

(2)MySQLの導入

 ApacheとPHPは,Fedora Core2が提供しているパッケージをそのまま用いる。しかし,MySQLだけはFedora Core2に含まれているパッケージのバージョンが3.23と少々古い。そこで,より新しいバージョンの4.0系を入手し,導入することにした。

MySQLは,ソフトエージェンシーのミラー・サイト(http://www.softagency.co.jp/MySQL/downloads/mysql/4.0.html)などから,3つのRPMパッケージをダウンロードして導入する。

図2 MySQLの入手・導入
$ wget http://www.softagency.co.jp/MySQL/Downloads/MySQL-4.0/
MySQL-server-4.0.27-0.i386.rpm
$ wget http://www.softagency.co.jp/MySQL/Downloads/MySQL-4.0/
MySQL-client-4.0.27-0.i386.rpm
$ wget http://www.softagency.co.jp/MySQL/Downloads/MySQL-4.0/
MySQL-shared-compat-4.0.27-0.i386.rpm
$ su
# rpm -ivh MySQL-server-4.0.27-0.i386.rpm MySQL-client-4.0.27-0.i386.rpm 
MySQL-shared-compat-4.0.27-0.i386.rpm

 MySQLのインストールが完了したら,PHPからMySQLにアクセスするために必要なphp-mysqlパッケージをインストールする。
# yum install php-mysql
:
Is this ok [y/N]: y
 これで,La!cooda WIZを動作させるのに必要なソフトウエアをすべて導入した。念のため,図3のようにして必要なパッケージを確認しておこう。

図3 La!cooda WIZに必要なパッケージを確認する
# rpm -qa | grep httpd
system-config-httpd-1.2.0-3
httpd-2.0.50-2.1
# rpm -qa | grep php
php-mbstring-4.3.8-2.1
php-4.3.8-2.1
php-pear-4.3.8-2.1
php-mysql-4.3.8-2.1
# rpm -qa | grep MySQL
MySQL-server-4.0.21-0
MySQL-shared-compat-4.0.21-0
MySQL-client-4.0.21-0

(3)PHPに関する設定

 /etc/php.iniファイルに必要な設定を施すだけだ。しかし,一つ間違えると文字化けを起こしたり,ファイルのアップロードができなかったりする。ここでの設定ミスが原因のトラブルが一番多いので,注意して実施していただきたい。

 /etc/php.iniファイルの変更個所は図4の通り。なお,一部デフォルト設定のままでよい個所もある。

図4 PHPの設定ファイル(/etc/php.ini)の変更個所
行番号
287: error_reporting = E_ALL & ~E_NOTICE ←@
293: display_errors = Off ←A
302: log_errors = On ←B
344: error_log = /var/log/php ←C
380: register_globals = On ←D
861: session.use_trans_sid = 1 ←E
994: mbstring.language = Japanese

↓F
999: mbstring.internal_encoding = EUC-JP
1002: mbstring.http_input = auto
1006: mbstring.http_output = EUC-JP 
1013: mbstring.encoding_translation = On
1017: mbstring.detect_order = auto
1021: mbstring.substitute_character = none;
↑F


@「E_ALL & ~E_NOTICE」にすると,警告レベルのエラーは無視し,本来のエラーを出力させる。
AWebブラウザ側にPHPのエラーを出力させる設定。実稼働サイトで有効(On)すると,エンド・
ユーザーのWebブラウザ上にファイルのパスなどが表示されてしまう。セキュリティ上問題があ
るため,無効(Off)にする。
BPHPからのエラー出力をsyslogやファイルに出力できる。エラー出力はトラブル・シューティ
ングに必要なため,有効(On)にする。
CPHPからのエラーを出力するファイルを指定する。
DEGPCS変数(Environment, Get, Post, CookieおよびServerビルトイン)をグローバ
ル変数とする設定。Webブラウザから送信されたデータ(POSTやGETで渡される値)をPHPプロ
グラム内の変数に直接代入できるようになるため,セキュリティ上問題がある。ただし無効にす
ると,La!cooda WIZが動作しない。
ECookieが無効になっている場合でも,GETメソッドでセッションIDを渡す設定。Webブラウ
ザの設定でCookieが無効になっている時や,Cookieの使えない携帯電話でもセッションを維
持できる。有効にする。
F日本語などのマルチバイト文字を処理するための設定。ただし「mbstring.http_output」
を有効にするには,「output_handler」による出力変換を有効にする必要がある。今回は不要。

 最後に,エラー・ログを書き込むファイル(/var/log/php)を作成し,Apacheのプロセスから書き込み可能になるようにパーミッションを設定する。
# touch /var/log/php
# chown apache.apache /var/log/php

(4)Apacheに関する設定

 Fedore Core2のApacheでは,デフォルトの文字コードが「UTF-8」になっている。この設定は,HTTPヘッダー内のContent-Languageフィールドに書き込まれ,設定した文字コードと異なる文字コードを使用したWebコンテンツの場合には文字化けの原因になる。無効にしておくとよい。

 無効にするには,/etc/httpd/conf/httpd.confファイルの767行目,
AddDefaultCharset UTF-8
を次のように書き換える。
AddDefaultCharset Off

 書き換えたら,念のため文法のチェックをする。

# /usr/sbin/apachectl configtest

「Syntax OK」が表示されれば問題ない。最後に変更した設定を読み込ませるために,Webサーバーを起動(または再起動)する。

# /sbin/service httpd graceful

なお,筆者と同様の手順でFedora C o r e 2 をインストールした場合には,Apacheがシステム起動時に起動されない。自動起動するには,

# /sbin/chkconfig httpd on

を実行しておく。

(5)MySQLに関する設定

 MySQLをインストールすると,MySQLのデーモンが起動する。その際,/var/lib/mysql ディレクトリ内には,データベース・エンジンが使うデータ・ファイルやログ・ファイル,初期データベース(図5)も作成される。さらに,システム起動時にMySQLを自動起動する設定も行われる。

図5 インストール時に作成されるデータベース
「mysql」と「test」というデータベースが作成される。
# mysqlshow
+-----------+
| Databases |
+-----------+
| mysql     |
| test      |
+-----------+

 このままでもすぐに使えるわけだが,データベース管理者のパスワードの設定と,デフォルトの文字コード設定などを含む設定ファイルを作成しておこう。

●DB管理者のパスワード設定

MySQLをインストールした際に表示されたように,データベース管理者(デフォルトでは「root」)のパスワードの設定が必要だ。設定しないと,パスワードなしでデータベースに接続できてしまうことになる。同様の理由で匿名ユーザーも削除しておく。手順は図6の通り。

●設定ファイルの作成

 MySQLをインストールした時点では,設定ファイル(/etc/my.cnf)が存在しない。存在しない場合,MySQL自身が持つデフォルトの設定で動作している。

 設定ファイルを作成するには,/usr/share/mysqlディレクトリ配下のテンプレート・ファイルを利用するとよい。「myhuge.cnf」と「my-large.cnf」「my-medium.cnf」「my-small.cnf」のデータベースの規模に合わせた4種類のファイルが用意されている。

 自分の利用する環境に合わせて,そのテンプレートをコピーして使おう。ちなみに,筆者はmy-medium.cnfファイルを選んだ。

# cp /usr/share/mysql/mymedium.cnf /etc/my.cnf

 コピーしたら,〔mysqld〕セクションに次の1行を追加する。

default-character-set=ujis

 これでデフォルトの文字コードが日本語EUCに設定される。最後にMySQLを再起動し,設定を反映させる。

# /sbin/service mysql restart

La!cooda WIZの導入

 「http://wiz.syscon.co.jp/License.htm」のWebページから入手に必要な手順を踏み,La!cooda WIZのソース・アーカイブ(wiz_linux_1.3.2.tar.gz)をダウンロードし,/usr/local/srcディレクトリに保存する。早速,保存したソース・アーカイブを展開しよう。
# su
# cd /usr/local/src
# tar xvzf wiz_linux_1.3.2.
tar.gz
# cd wiz

 次に,wizディレクトリ内にあるデータベース作成スクリプト( c r e a t e D bForMySQL4.sql)を,MySQLクライアント・ソフト(mysql)から実行し,La!cooda WIZの動作に必要なデータベースとテーブルを作成する。

# mysql -u root -phogehoge < createDbForMySQL4.sql

 以上で,データベース利用者が「nobody」のデータベース「masters」が作成された。データベースを作成したら,root.shスクリプトを実行する。

# ./root.sh

 実行するとまず,Apacheのドキュメント・ルートの位置の入力を促すメッセージが表示される。Fedora Core2のApacheのドキュメント・ルートは「/var/www/html」であるため,それを入力する。

Where is DocumentRoot of Apache? -> /var/www/html

 次のメッセージが表示されたら,La!cooda WIZをインストールするマシン名(またはIPアドレス)を入力する。デフォルトは「localhost」であり,通常はデフォルトで構わない。

What is your server name? (default:localhost) ->

 その次には,Apacheのプロセスを実行するユーザー名の入力を促すメッセージが表示される。デフォルトは「nobody」だが,Fedora Core2のApacheの設定に合わせて「apache」と入力する。

Name httpd username.default:nobody) -> apache

 最後に,データベースに接続するユーザー名を入力する。先ほど作成したデータベース「masters」の利用者は「nobody」であるため,デフォルト設定のままでよい。

Name database username.(default:nobody) -> nobody

 La!cooda WIZのインストールが実行され,図7のバナーが表示されるとインストールが完了する。

図7 La!cooda WIZのインストールが完了した際のメッセージ
*** WIZ has been successfully installed. ***
*** ***
***1999-2000 (C)Top Management Service,inc. ***
*** All Rights Reserved.***
*** info@tms-px.co.jp ***
***2002-2003 (C)System Consultants Co.,Ltd. ***
*** All Rights Reserved.***

 インストールが完了したら,La!cooda WIZの設定ファイル(/var/www/html/wiz/gw.php)の2カ所を書き換える。

(1)MySQLの設定

 初期状態では,RDBMSにPostgreSQLを使用するように設定されている。これをMySQLに変更しなければならない。

gw.phpファイルの6行目と10行目を,
$db_port = "3306";
$db_type = "MySQL";

のように書き換える。

(2)アクセスするURLの設定

 外部に公開するサーバーであれば,社内LANからアクセスするURLと外部からアクセスするURLが違うことが多いだろう。そのようなネットワーク環境に対応するためには,gw.phpファイルの14行目を,
$hostname = getenv(HTTP_HOST);
$_ROOT_URL_ = "http://$hostname/wiz/";

のように書き換える。これで,getenv関数によってホスト名を取得し,アクセス環境に合わせたURLが設定できる。

La!cooda WIZの初期設定 ユーザーの一括登録


 早速,WebブラウザからLa!coodaWIZ にアクセスして動作確認をしてみよう。Webブラウザのアドレス・バー(ロケーション・バー)に「http://インストールしたサーバーのホスト名またはIPアドレス/wiz/」を指定する。

 認証ダイアログが表示されたら,「ユーザー名(U)」に「admin」を,「パスワード(P)」に「wiz=0yen」を入力する。

 La!cooda WIZが正しく導入されていれば,初期状態の画面が表示される。
 もし,認証ダイアログや初期画面が正しく表示しない場合には, 別掲記事「導入に関するトラブル」を参考にしていただきたい。

 La!cooda WIZの起動に成功したら,あとは社員(利用者)を登録すれば,とりあえず運用を開始できる。

 La!cooda WIZには,フォーム入力により社員の情報を登録できる機能が備わっているが,社員数が50名を超えてくると1人ずつ登録するのは面倒であり,スムーズに運用を開始できない。

 そこであらかじめ,社員の情報を登録したファイルを用意して,それをデータベースにインポートし,即座に運用を開始できる方法を紹介しよう。

(1)部門と就業形態データ作成・登録
 まず社員データをインポートする前に,部門情報と就業形態情報を登録しておかなければならない。

 登録するファイルのフォーマットはそれぞれ,連番(部門コード)と部門名称,連番(就業形態コード)と就業形態名称のシンプルなものだ。そして,登録したいデータをすべてタブ区切りテキストで作成する。

 図8に示したファイルが,部門情報登録用のデータであり,図9が就業形態情報登録用のデータである。連番の開始番号が「2」から始まっている理由は,既に部門「総務部」と就業形態「正社員」が登録されているためだ。

 これらは,初期管理者の外部キーになっているため,削除できない。もし名前を変更したい場合は,登録後にWebブラウザ経由で実施しよう。

 ファイルが作成できたら,MySQL付属のユーティリティ・ソフト「mysqlimport」を用いて,データベースの該当するテーブルにインポートする(図10)

図10 部門情報登録用のデータと就業形態情報登録用のデータをデータベースにインポート
$ mysqlimport --local --fields-terminated-by='\t' -u root -phogehoge masters division.tsv
masters.division: Records: 4 Deleted: 0 Skipped: 0 Warnings: 0
$ mysqlimport --local --fields-terminated-by='\t' -u root -phogehoge masters mst_type.tsv
masters.mst_type: Records: 2 Deleted: 0 Skipped: 0 Warnings: 0

 部門情報はdivisionテーブル,就業形態はmst_typeテーブルに登録する。なお,作成したファイルの文字コードがシフトJISであれば,nkfコマンドを使って,
$ nkf -e −Lu division.tsv > division_euc.tsv
$ nkf -e −Lu mst_type.tsv > mst_type_euc.tsv

のように日本語EUCに変換して,変換したファイル( division_euc.tsv,mst_type_euc.tsv)をインポートする。

 また,連番はserialnumberテーブルで管理されている。直接データをインポートした場合には,このserialnumberテーブルで管理するカウンタ値を更新する必要がある。データのインポートが完了したら,使用した連番に1を足した値で更新するSQL(図11)を実行する。

図11 serialnumberテーブルの更新(serial_update.sgl)
DELETE FROM serialnumber WHERE name = 'division';
INSERT INTO serialnumber SELECT 'division',MAX(CAST(division AS UNSIGNED))+1 FROM division;
DELETE FROM serialnumber WHERE name = 'mst_type';
INSERT INTO serialnumber SELECT 'mst_type',MAX(CAST(kind AS UNSIGNED))+1 FROM mst_type;

$ mysql -u root -phogehoge masters < serial_update.sql

(2)社員データの作成・登録

 社員データの登録に必要な属性と値の制限は表3に示した。「○」を付けた項目は入力不可欠なものだ。なお,社員データを作成する際の注意点や登録時の問題点を図12にまとめた。

表3 社員データの登録に必要な属性と値の制限
属性入力文字制限等省略不可項目
社員ID>半角英数字50文字まで
パスワード半角英数字50文字まで
半角英数字10文字まで
半角英数字10文字まで
姓(英)半角英数字20文字まで
名(英)半角英数字20文字まで
姓(ふりがな)半角英数字20文字まで
名(ふりがな)半角英数字20文字まで
性別t:男性,f:女性
就業形態就業形態コード。半角数字10文字まで
部門 /td>部門コード。半角数字10文字まで
誕生日年月日(yyyy/mm/dd) 
入社日年月日(yyyy/mm/dd) 
退職日年月日(yyyy/mm/dd) 
内線番号半角英数字20文字まで
郵便番号半角英数字7文字まで 
住所1半角英数字100文字まで 
住所2半角英数字100文字まで 
住所3半角英数字100文字まで 
電話番号半角英数字20文字まで 
携帯番号半角英数字20文字まで 
メール・アドレス半角英数字50文字まで 
連絡先半角英数字100文字まで 
ソート番号半角英数字10文字まで
統括ユーザーt:統括ユーザー,f:一般ユーザー 

図12 社員データを作成する際の注意点や登録時の問題点
1. 半角カタカナは文字化けする可能性があるので使用しない
2. エラーが発生したレコードはスキップされ,それ以外のデータは登録される
3. 登録は常に追加のみで更新は行わない
4. 登録するファイルの文字コードは,日本語EUCを使用する
5. 誕生日と入社日,退職日を省略する場合は「\N」を入力する。
その他の項目を省略する場合はタブ文字のみで何も記入しない
6. パスワードはcrypt関数によりハッシュ化した値をセットする
7. 統括ユーザーとは特別なユーザーのことであり,
分からなければ一般ユーザーとして設定しておくとよい。あとから変更もできる

 また,登録する社員データは大量になるだろうから,Microsoft Excelの表計算ソフトで作成し,タブ区切りテキスト形式で保存して用いるとよい。

 社員データ(図13)の作成が完了したら,employeeテーブルにインポートする(図14)。なお,whiteboardテーブルにもemployeeテーブルと同じレコードが必要なので,インポートに成功した後に同じレコードを作成するSQL(図15)を発行しておく

$ mysql -u root -phogehoge masters < whiteboard_sync.sql

図13 社員データ(employee.tsv)
suzui→uit0tkg6JSA0s→鈴木→一郎→suzuki→ichiro→すずき→いちろう→t→2→3→\N→
\N→\N→→→→→→→→→→1→f ※「→」はタブ文字

図14 社員データをデータベースにインポート
$ mysqlimport --local --fields-terminated-by='\t' -u root -phogehoge masters employee.tsv
masters.employee: Records: 1 Deleted: 0 Skipped: 0 Warnings: 0


図15 whiteboardテーブルにもemployeeテーブルと同じレコードを作成(whiteboard_sync.sql)
DELETE FROM whiteboard WHERE emp_cd <> 'admin';
INSERT INTO whiteboard (emp_cd) SELECT emp_cd FROM employee WHERE emp_cd <> 'admin';

 登録に失敗したときは,直接データベースを操作する必要がある。その場合,WebブラウザからMySQLを操作するGUIツール「phpMyAdmin」などを用いると便利だ。別掲記事「phpMyAdminの導入」にphphMyAdminの導入方法を記したので参考にされたい。

社員データは登録されたが,上司・部下の設定や各機能に関する設定も運用前に施す必要がある。これらの初期設定に関しては,「WebグループウエアLa!cooda WIZ 初期設定ガイド」(http://wiz.syscon.co.jp/SyokiGuide.html)を参照するとよいだろう。

導入に関するトラブル

 認証ダイアログや初期画面が正しく表示されない場合,Webブラウザに表示される情報とログ・ファイルに記録される情報から原因を特定できる。ログはそれぞれ,Apacheは「/etc/httpd/logs/error_log」に,PHPは(php.iniで指定した)「/var/log/php」に,MySQLは「/var/lib/mysql/ホスト名.err」に書き込まれている。

【トラブル1】

「データベース接続に失敗しました」というメッセージ・ボックスが表示された。

【原因と解決策】

・MySQLのデーモンが起動していない(図A-1)。MySQLデーモンが起動されているかを確認する。

・gw.phpファイルのデータベース接続情報が間違っている。「$host」(ホスト名)と「$db_port」(接続ポート番号)を確認する。

【トラブル2】

Webブラウザに「件数の取得:データを取得できませんでした。」が表示される。

【原因と解決策】
・gw.phpファイルのデータベース接続情報が間違っている。「$masterdb」(データベース名),「$db_user」(データベース利用者のユーザー名),「$db_password」(パスワード)を確認する。

【トラブル3】
Webブラウザに「クラスを初期化できませんでした。」が表示される。

【原因と解決策】
・gw.phpファイルのデータベース接続情報が間違っている。「$db_type」(DBMSの種類)を確認する。

【トラブル4】
初期管理者の初期パスワードでログインできない。

【原因と解決策】
・php.iniファイルのregister_globalsの値がon(有効)になっていない。
・MySQLに正しくデータが作成されていない。MySQL クライアントを使って,employeeテーブルに,「admin」が存在し,パスワードが初期パスワードのハッシュ値,retire_dateが「NULL」になっていることを確認する(図A-2)。

【トラブル5】
Webブラウザに「認証に失敗しました」が表示される。

【原因と解決策】
・php.iniファイルのoutput_buffering の値がOn(有効)になっていない。

図A-1 MySQLのデーモンが起動していない場合のPHPのエラー・ログ
[19-Oct-2004 02:03:00] PHP Warning: mysql_connect(): Can't connect to local 
MySQL server through socket
'/var/lib/mysql/mysql.sock' (2) in /var/www/html/wiz/class/DBConnectMysql.php 
on line 32
[19-Oct-2004 02:03:00] PHP Warning: mysql_select_db(): Can't connect to local 
MySQL server through socket
'/var/lib/mysql/mysql.sock' (2) in /var/www/html/wiz/class/DBConnectMysql.php 
on line 33
[19-Oct-2004 02:03:00] PHP Warning: mysql_select_db(): A link to the server 
could not be established in
/var/www/html/wiz/class/DBConnectMysql.php on line 33

図A-2 初期管理者が登録されていることを確認する
# mysql -u root -phogehoge
:
mysql> use masters
Database changed
mysql> select emp_cd,emp_password,retire_date from employee;
+--------+---------------+-------------+
| emp_cd | emp_password | retire_date  |
+--------+---------------+-------------+
| admin | uit0tkg6JSA0s | NULL         |
+--------+---------------+-------------+
1 row in set (0.43 sec)

phpMyAdminの導入

「phpMyAdmin」(MySQL database administration tool)は,WebブラウザからMySQLを操作できるソフトウエアである。導入方法は,次の通り。

「http://www.phpmyadmin.net/home_page/」のサイトからソース・アーカイブ「phpMyAdmin-2.6.0-pl1.tar.gz」(記事執筆時点の最新版)をダウンロードし,展開する。

$ tar xvzf phpMyAdmin-2.6.0-pl1.tar.gz
$ cd phpMyAdmin-2.6.0-pl1

 次に,phpMyAdminの設定ファイル(config.inc.php)を図B-1のように編集する。

 編集したら,Webサーバーからアクセスできる場所にディレクトリごとファイルを移動する。その際,ディレクトリ名を,先ほどの設定ファイルで記した「phpMyAdmin」に変更する。

$ su
# cd ..
# mv phpMyAdmin-2.6.0-pl1 /var/www/html/phpMyAdmin

 最後に,Basic認証によるアクセス制限を付けておく。まず,/etc/httpd/conf/httpd.confファイルの319行目を,
AllowOverride AuthConfig

のように書き換える。これで,ユーザー認証に関する設定を,個々のディレクトリに用意した.htaccessファイル内で記述可能になる。

 次に,任意のディレクトリにパスワード・ファイルを作成する。
# mkdir /var/www/passwd
# htpasswd -bc /var/www/passwd/.htpasswd hogeuser hogepass

 ここでは,ユーザー名を「hogeuser」,パスワードを「hogepass」とした。

 最後に,/var/www/html/phpMyAdminディレクトリ配下に図B-2の内容が書かれた.htaccessファイルを作成する。

 これで,
# /sbin/service httpd graceful
によりApacheを再起動する。設定がすべて,反映されてphpMyAdminの導入は完了する。
 Webブラウザのアドレス・バーに「http://ホスト名またはIPアドレス/phpMyAdmin/」指定し,認証ダイアログに「ユーザー名(U)」に「hogeuser」を,「パスワード(P)」に「hogepass」を入力する。「phpMyAdmin 2.6.0-pl1 へようこそ」のデータベース操作画面(写真B-1)が表示される。操作は非常に簡単なのでいろいろ使ってみよう。



  1. 導入から15分以内で運用開始
  2. 30分で構築できる運用管理環境とセキュリティ対策
  3. 1時間以内で便利な新機能を追加する
  4. La!cooda WIZ 情報源



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