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マーケッターが見た ビジネスに役立つ IT を

            ITNAVI.mag
            < 2008/08/31 Vol.096 >            
                          (発行部数 約2500部)
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ご無沙汰しています。アイティーナビの大澤です。

8月ももう終わりですが、天候が不安定ですっきりしませんね。


今年は三菱東京UFJ銀行のシステム統合があり、5月に提携先のセブン
銀行のATMなどが、一時利用できなくなる障害が起きたことも記憶に
新しいですね。そんな時に私は、現場のSEが不眠不休で改修に取り組
んでいる姿を想像します。

単に銀行の一利用者であれば、ちゃんとテストしているのか?という
疑問を持ったり、近所のATMで出金できないことを不満に思うでしょ
う。

でも私は違います。ATMが使えない不便さよりも、現場のSEの痛みを
感じてしまうのです。それはなぜでしょうか。


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■ ITプロジェクトを失敗させる方法
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私は過去に15年間、SEを経験しています。今思えば、SEの立場で何と
かしようと思っても、何とかならないこともよくありました。

営業が仕事を取ってきた時点でプロジェクトが"終わっている"ケース
もありました。

例えば、受注する側が見積もりをするのが普通の商慣習ですが、はじ
めに予算ありきで依頼してくるケースがあります。予算に合った要求
仕様であれば全く問題ありません。問題なのはそうでないケース。

しかもお客さんの言い値で受注せざるを得ない状況で短納期。こうい
う場合、相見積もりを取られていると、それとなく提示された金額よ
り高い見積もりを提示すれば受注することはできません。

利益が出ないことがわかっていても受けざるを得ないことがあります。
いわゆる赤字覚悟の案件とでもいいましょうか。売上至上主義の弊害
ですね。こういった案件は前提条件に無理があるので、間違いなくデ
スマーチまっしぐらです。そのしわ寄せは開発の現場に来ます。


このようにITプロジェクトには、失敗するべくして失敗しているケー
                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
スがあるのです。



「ITプロジェクトを失敗させる方法」という本があります。


この本では、プロジェクトの段階別に失敗分析をされています。

「提案・受注段階」では、以下の失敗要因を挙げています。

前に挙げたケースで考えられる要因を、発注側の要因と受注側の要因
でそれぞれ三つずつ選んで">"としてみました。

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●発注側(ユーザ企業)における失敗要因

>要件をまとめる技術や人材の不在

>ベンダ企業の能力を適切に評価できない

>ベンダに丸投げし、無理な契約条件を強いる

・経営者の関与が弱い
・ユーザ側に取りまとめ役が不在
・適切なRFPを作成する技術や人材の不在
・組織全体が強いプレッシャーを受けている
・組織内の上層部に政治的な争いや不安定や人間関係がある
・独裁的な企業文化でボトム<ミドル>アップの
 フィードバックがかからない


●受注側(ベンダ企業)における失敗要因

>「成功させること」ではなく「受注すること」が目的になっている

>問題の先送り

>受注審査のルールや手順が確立されていない

・自分の言動が与える影響力を経営者が理解していない
・間違った顧客志向
・リスクに対するレビューが行われていない


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プロジェクトを成功させるためには、プロジェクトマネージャー、プ
ロジェクトメンバーだけでなく、経営層や営業部門も含めた意識改革
が必要だということがわかります。

会社の利益を高めるために、どのような仕事をするべきか、何を強み
として何を売るのか、逆に何をやらないべきかを明確にすることです。

経営者が目先の財務的視点でしか見ていない、仕事取ってこい、食う
ために頑張れ、これではだめなんですね。



現場では何が起きているか。建築現場にたとえるとわかりやすいです。

開発の現場は過酷です。開発者は現場で工事をする人に相当します。

図面通りにできてないじゃないかとか、このままじゃ納期に間に合わ
ないから早く作れとか、親方にさんざん言われます。

設計も納期も自分たちが決めたものならともかく、上からおりてきた
もの。計画通りに行かなければ、逃げ道や言い訳ばかりを考えます。

そして理不尽な要求に現場の人間は疲弊していきます。

そんなことが何度も何度も起きるので、いいものを作ろうという気概
は、いつの日かなくなってしまいます。

現場サイドからなんとかしよう、なんとか変えようと努力しますが、
経営者の考え方や営業スタイルは、そうそう変わるものではなく、提
案・受注段階での失敗はなかなかなくなりません。

なので失敗するプロジェクトは繰り返します。

そして、現場の人間があきらめの境地に達したとき、転職をするので
す。

もしかしたら他の会社は違うんじゃないかという淡い期待を抱いて。

でも残念ながら、会社を変えてもあまり状況は変わらないという現実
が待っています。その時、業界全体の構造的な問題であることに気づ
             ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
きます。

業界構造がゼネコンと同じということで
ITゼネコン
なんて言葉もあるくらい、それほど深い深い問題なのです。




また、「人を“使う”」という言葉と同様に、「人月」という見積も
                       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
り単位も人売りの印象が強い悪しき商慣習の一つですね。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
人月の神話

「コストは実際に人数と月数の積に比例する。が、進捗はそうではな
い。したがって、仕事の大きさを測る単位としての人月は、疑うべき
危険な神話なのだ。人月とは、人と月とが互いに交換できるという意
味だからである。」 (フレデリック・P・ブルックス)

これを変えていくには、「人月の神話」や「ピープルウェア」などを
読んで現状を"改善"しようという気概のある経営者でないと難しい。

失敗法則は何十年も前から言われてきていることで、基本的に今でも
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
変わっていません。なので、そのまま商慣習に従うことは、単に経営
者が現実から目を背けているだけです。逆にいうと、"改善"はそれほ
ど、痛みを伴うことだといえます。


ある調査では、プロジェクトの成功要因の第1位は「幹部の支援」第2
位が「ユーザの貢献度」第3位は「プロジェクトマネージャーの能力」
となっていることからも、経営者との関わりの大きさが伺えます。




「ITプロジェクトを失敗させる方法」では失敗事例と分析だけではな
く、それに対する成功の鍵についても書かれています。。

実話を元にしたストーリー仕立ての失敗事例に対して、成功事例はす
こしリアリティに欠けるように感じました。それでも、成功事例をイ
メージすることは大切です。

いやむしろ、成功するイメージこそが、必要なのではないでしょうか。

小さな成功を積み重ねることで、大きな構造改革も可能になるのです
から。


イチロー選手の言葉を借りると

「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただ1つ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
の道だと思っています」
 ̄ ̄


プロジェクトマネージャーだけでなく、ソフトハウスの経営者にも読
んで欲しい一冊です。


ITプロジェクトを失敗させる方法

Amazonレビューでは★★★★☆


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●編集後記
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昨日は起業家の集まりで、カート大会があったので参加してきました。

天候が危ぶまれましたが、日頃の行いが良いせいか(笑)、走行する時
間だけ雨がやんでくれました。

わずか5分の走行を2セットしただけでも、もう腕はパンパン足はフラ
フラ。カートはれっきとしたスポーツですね。モータースポーツと云
われる所以です。

F1ドライバーが、想像を絶するスピードで、横Gも縦Gも次元が違うマ
シンを、1時間以上もドライブできるのは、強靭な体を作っているか
ら出来ることでしょう。

もちろんF1に行くまでに相当な積み重ねがあったことは、想像に難く
ありません。

                             大澤

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Vol.095 マイクロソフトによるヤフー買収提案の影に



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